事例

 Bさん(男)とは相談支援事業所からの紹介で利用となり、最初は幼い頃の経験が原因なのか中々指導員と接する事ができず、一人の指導員(男性)とだけは一緒に過ごす事ができる状況でありました。事業所に居てもその指導員から離れられずにいたのですが…

 何度か利用しているうちに、指導員(女性)がBさんの着ている服や持ち物のほとんどがゲームのキャラクターの物である事に気付きました。そのゲームについて話しかけると、Bさんは嬉しそうにゲームの事を話してくれました。他の指導員ともこの事を共有し、Bさんに積極的に話しかけるとBさんもその男性指導員から少しずつ離れ、別の指導員ともコミュニケーションを取る事が出来るようになりました。事業所に通っているお友達とも会話をし、遊ぶことが出来るようにもなりました。

 最初のうちは挨拶(おはようございます・いただきます・さようなら)も言う事が出来ずにいたBさん。私たち指導員には、「何で挨拶しなきゃならないんだ」という雰囲気を出しているようにも見えました。パズルや本が好きで、一人で過ごす事が多かったBさんですがある日一人の女の子から「Bくん、一緒におうちごっこやらない?」と誘われました。「うん」と嬉しいのを隠すように小さな返事をし、お父さん役として遊び始めました。

おうちごっこでの一コマです。

  「お父さんごはん作ったから食べてね」とお母さん役の女の子。

  きちんと手を合わせて「いただきます」とお父さん役のBさん…

普段の昼食時には絶対に言わない「いただきます」を、おうちごっこの中では何の抵抗もなく言っているのを見て指導員はびっくりしました。

普段の生活の中で自然に言えるようになるにはどうしたらいいのだろうと指導員たちは考えました。

 当時Bさんはこの時、小学校入学前でしたがなぞなぞの本を読み、一人で解いているのを見て字が読める事や言葉の意味が分かる事を知っていたため、まずは文字カードを使って表現してもらう事にしました。

また、Bさんは入学前である事から、名前練習(なぞり)と併せてあいさつ文のなぞりも行う事にしました。

・場面のイラストを見る→文字カードで挨拶の単語を作る→読む

・名前なぞり+あいさつ文なぞり

これを毎日の個別支援の時間に取り組みました。

それと同時に登所時や昼食時、帰宅時には指導員と一緒に他の人に挨拶をしたり、「声が小さくても大丈夫だよ」と声がけをしたり、「おねがいします」「ごめんなさい」を言いたいけれど言えない時は文字カードを使って言葉を作り、伝えたい相手に見てもらいました。そして、本人が「よし、言うぞ」と思えるような環境と雰囲気作りを心掛けました。

 最初は挨拶したくてもできなかったBさんも、声を出さず口パクで→ものすごく小さい声で(この時は指導員も嬉しくて他の指導員とBさんと一緒に喜びました)→ふざけながら(自分なりの挨拶で、さらば!!など…迎えに来たお母さんも言えている事にびっくりしていました)→みんなの前で挨拶(朝の会・帰りの会)が出来るようになりました。

 Bさんは成長とともに出来る事も増え、それを私たちがお手伝いし実感出来た事がBさんや私たち指導員のとても良い経験となりました。その後Bさんは引っ越しする事になり、関わっていく事が出来なくなってしまったのですが、こうした経験を踏まえこれからも子ども達を支援していきたいと思っています。

一般社団法人 PLUSIA

PLUSIA(プラシア)とは、プラスの複数形です。 この名前には私達に関わる方々に、プラスが沢山くっついて欲しいとの願いを込めています。

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